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仙台家庭裁判所 昭和55年(家)1164号 審判 1981年3月31日

申立人 小谷沢アサ

相手方 山下美奈子 外六名

主文

一  相手方小谷沢和夫は申立人を引き取つて扶養せよ。

二  申立人に対し、相手方山下美奈子、同小谷沢一枝、同高田操、同小谷沢ふさ子、同福田吉子はそれぞれ一か月金四、〇〇〇円ずつを、相手方小谷沢智男は一か月金六、〇〇〇円ずつをいずれも昭和五六年四月から毎月末日限り、持参または送金して支払え。

理由

本件申立は、要するに、申立人が子である相手方らに対し相当な方法による扶養を求めるというにある。

よつて判断するに、調査官作成の調査報告書二通、当裁判所の各当事者に対する審問の結果、その他本件記録中の各証拠を総合すれば、以下の事実を認定することができる。

一  申立人の生活状況

申立人は八〇歳の老女で、一〇数年前に夫を亡くし、その後申立人と相手方ら及び相手方らどうしの間に何かといさかいが絶えず、申立人は相手方らの間を転々とし、かろうじて生活して来た。

申立人には、現在資産、収入はない。ただ老齢福祉年金月額二二、五〇〇円の支給を受けている。そこで、申立人の年齢、健康状態など諸般の事情に生活保護基準(月額四五、二一〇円)をも勘案して判断すると、申立人の生活費としては、上記の老齢福祉年金のほか最低限月額二六、〇〇〇円(誰かに引き取られた場合の額)が必要であると認められる。

二  相手方小谷沢和夫の引き取り扶養

申立人に対して、相手方らのうち進んで引き取ろうとする者はいない。ただ、相手方小谷沢和夫(三男)のみが、申立人に将来入院加療の必要が生じたような場合に他の相手方らの協力が得られるならば、申立人を引き取つてもよいとの意向を示しており、申立人も相手方小谷沢和夫に引き取られることを希望している。また、相手方小谷沢和夫は妻と子供一人の家族で、建坪約二五・八坪の自宅を有しているので、申立人を同居させることは可能である。

そこで、相手方小谷沢和夫には、申立人の引き取り扶養を分担させるのを相当と認める。

三  他の相手方らの金銭扶養

相手方山下美奈子は申立人の長女で、土地二か所と家屋を所有し、夫の収入(月額約二一万円)などで未成年子一名を養育しながら生活している。相手方小谷沢一枝は申立人の二女で、自宅及び敷地を所有し、書道教師としての収入(月額約一二万円)で生活している。相手方高田操は申立人の三女で、夫は乳牛約三〇頭を飼育して酪農業に従事し、自身は〇〇市役所に勤務して、未成年子二名を養育している。相手方福田吉子は申立人の五女で、夫が○○研究所代理店を経営しているほか、土地、家屋を所有し、その家賃収入(月額三万円)を得、未成年子二名を養育している。以上の事実に照らせば、上記相手方ら四名は、いずれも申立人に対する扶養料として、月額四、〇〇〇円を支給する余力があるものと認められ、同人らは当裁判所の審問に際してもこのことを認めている。

相手方小谷沢ふさ子(申立人の四女)は、扶養料を支払う余力がない旨主張するが、同女は独身で、自宅を所有し、株式会社○○仙台支店に勤務し、その月収は約一八万円であることが認められるところ、昭和五五年度の仙台市における世帯人員別標準生計費の一人世帯の額は七二、九三〇円であるから、相手方小谷沢ふさ子が申立人に対する扶養料として月額四、〇〇〇円を負担する余力があることは明らかである。

相手方小谷沢智男は、申立人の二男(長男は死亡)であるが、申立人に対する悪感情から、扶養料を支払わないし、また支払う余力もない旨述べている。しかしながら、相手方小谷沢智男は、昭和三〇年頃、現住所に土地及び店舗兼住宅を取得し、以来継続して八百屋業を営んでいる。同所付近は、マンション、アパートなども点在する住宅街で、近くには米穀店や酒店があり、同人方も野菜、果物類のほかにインスタント食品、洗剤などを置いて販売しており、相応の収益をあげているものと推認される。また、相手方小谷沢智男は、他に土地及び貸家を有し、月額四一、〇〇〇円の賃料収入を得ている。家族は妻及び大学に進学させることを予定している長男と中学二年生の二男である。以上の諸点を総合して判断すると、相手方小谷沢智男には申立人に対する扶養料として月額六、〇〇〇円を負担する余力があるものと認定することができる。なお、このことは記録中の調査官○○○○作成の昭和五五年一二月二四日付電話聴取書によつても裏付けることができ、また、昭和四七年八月から昭和四八年七月まで毎月一万円を申立人に渡していたことは同相手方自身が述べているところである。

以上の次第であるから、申立人に対する金銭扶養としては、相手方山下美奈子、同小谷沢一枝、同高田操、同小谷沢ふさ子、同福田吉子に対して一か月金四、〇〇〇円ずつ、相手方小谷沢智男に対して一か月金六、〇〇〇円ずつを負担させるのが相当であると認められ、これを昭和五六年四月から(それ以前の分については、当裁判の仮処分以前においても、申立人は相手方山下美奈子、同高田操らに引き取り扶養されており、同人らにおいてその求償を求めてもいないので、支払いを命じない)毎月末日限り、申立人方(引き取り先の相手方小谷沢和夫方)に持参または送金して支払わせることとする。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 立川共生)

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